粗大ゴミへの驚きと期待
一般に腐植土ミミズは刈りとった草の上で飼育される。
その草の厚みは三〇〜四〇センチで、定期的にかき混ぜられ、水がまかれる。
一平方メートルのスペースに幾千というミミズが積みかさねられ、まさしくミミズだらけの状態である。
庭に生息しているミミズと違い、腐植土ミミズは生きてゆくのにかなりの土が必要となる。
飼育自体にはそれほど手間はかからないが、活発な活動を維持するには二五度が適温で、そのため酸素と湿りけも必要となる。
こうして一カ月もすると廃棄物はコンポストになる。
最も手間がかかるのは、できあがったコンポストからミミズを取りだす作業である。
ミミズそのものは新手の飼育業者に向けた農業資本として、あるいは釣りの餌として販売されている。
嬬虫堆肥の方は、従来の堆肥より上質で栄養素が豊富であるとして、ミミズ飼育業者の手によって抜群の効果が宣伝されている。
ただし、その夢のような効果については、現在、論争の的となっている。
ごみが発酵状態にあるとはいえ、ミミズがガラスやプラスチックまで食べてくれるわけではない。
あらかじめガラスやプラスチックなどを除去し、有機物質を発酵させた状態でミミズに与えなくてはならない。
そのため、嬬虫堆肥を作るには、事前に従来通りのコンポスト処理が不可欠となる。
この作業がはぶけないために、製品コストは高くつく。
また、ミミズの排植物の質はミミズが食べた物質と関連しているとはいえ、嬬虫堆肥は品質の予測ができないという欠点をもっている。
使用したごみにはさまざまな物質が混じっているため、ごみの種類が堆肥の評判をあげるわけではないからだ。
このようなことから、ミミズを使ったコンポストはあくまで通常の生ごみ処理の代用であり、それ以上のものではないと言えるだろう。
ただ、汚染浄化の手段として見るならば、ミミズは有効である。
なぜなら、ミミズの体内組織には有害物質を抑制する働きがあるからだ。
インドで排出されるごみは有機質に富み、湿っていて、ミミズには絶好の餌となる。
このように、もし事前のごみの選別作業が不要な地域であれば、ミミズによるコンポストは廉価ですむ。
ボンベイの技術研究所では、今後、ミミズによるごみ処理を一五ほどのホテルで積極的に推進する計画を立てている。
良質のコンポスト――「ごみ支配者」の夢フランスの都市から出るごみを使って作られたコンポストは、主に、キノコ栽培地や大規模な耕作地、ブドウ畑で利用されており、残りが園芸、莱園、苗床、あるいは家庭菜園で使われている。
キノコ栽培の床土を準備するには、コンポストにさらに馬糞と藁が混ぜられる。
これは堆肥としては組雑であるが、比較的乾燥しており、ほとんど「熟し」ていないため、後になって発酵が進行する性質をもっている。
この性質が、キノコ栽培業者に高くかわれている。
しかし、キノコは野性であれ栽培であれ、重金属を吸収する特性がある。
そのため家庭ごみで作られたコンポストを栽培用の床土に利用する際は、その量を抑制して(上限で一〇%)、コンポスト内の重金属の含有率を減らすよう注意が払われている。
一九七〇年代、フランスのキノコは水銀の含有率が高いとの理由で、ドイツの業者から輸入を拒否されたことがある。
これが事実なのか、それとも商業戦略の一端なのかはわからない。
いずれにしても、世界保健機関(W・〇)が定めた基準によれば、重金属を含有するキノコを一人あたり週に一キログラム以上消費すると健康に害が及ぶとされている。
ブドウ栽培も同様、家庭ごみを利用するのが伝統的であるため、キノコ栽培と同じ問題がついてまわる。
プドウ畑は有機物をぐんぐん吸いこむ。
ところが、一般に牧畜をあきらめた地域にブドウ畑がひろがっているため、堆肥には乏しい。
そこで都市から出るごみが注目されたのである。
都市ごみでできたコンポストはブドウの木に活力を与え、傾斜地での浸食作用を防ぐ役割もはたす。
しかし、こうしたコンポストにはプラスチック等のかけらが混入しているため、土壌を害してしまう。
これが「高級ワイン」の名を汚す恐れにつながるとして、ブドウ栽培業者のなかには都市ごみで作られたコンポストの使用をあきらめているところもある。
コンポストが高速道路の路肩や、公園や墓地にあるごみ捨て場の覆いとして活用されることもある。
それは悪化した土壌の改善に有効なためである。
また、火災で被害を受けた一帯に植林するとき、土壌構造を活性化させる目的でコンポストが利用されることもある。
実際、多くの土地で有機性物質の量を維持する必要があるし、土地に対する腐植土の割合も補正する必要がある。
もっとも、汚染を避けるには「好ましくない物」を排除し、コンポストの質を向上させることが鍵となるが、排除すべき物質が相当な量にのぼることも事実である。
高品質のコンポストとは、褐色で均質の粒状で、心地よい腐植土の臭いがして、重金属や有害物質を含まないものを指す。
コンポストの生産者は、コンポストの実用化にあたり、その土地に生息している生物のことも考慮しなければならないだろう。
しかし、企業家はそうした配慮を加えて良質のコン.ホストを生産することについて、軽視してきたきらいがある。
その理由は、コンポストを生産する工場はあくまで「コンポストを取り扱うごみ処理工場」であって、「コンポスト生産工場」ではないことによる。
ときとしてコンポストは迷惑な副産物で、販路がなければごみ捨て場行きとなるケースさえあるのだ。
現在では、大部分のコンポスト処理工場が老朽化しており、近代化を押しすすめることが急務となっている。
発酵しない物質をごみの山から除去する方法は、いくつか考えられる。
まず、工場での機械選別技術を高めて、ごみの物理的特徴から不要な物を取りのぞく方法であるが、あらゆる物質が混在しているごみの山を確実に選別するという意味では、それほど効果的とは言えない。
別の方法としては、有機物だけを専門に回収するというやり方コンポスト化に際して、いくら選別回収を実施しても、不適当な物質、とりわけ重金属を除去する困難さを考慮すると、これもあまり効果が期待できない。
コンポスト化を推進する目的から、家庭から出る有機ごみを徹底的に分別回収している国がある。
たとえば、ドイツやオランダ、デンマークでは、各家庭に三つのごみ容器を配り、そのうちの一つがコンポスト生産用の生ごみを収集するための専用容器となっている。
収集される有機ごみは「バイオウエスト」と呼ばれ、これをもとにコンポスト処理を行う工場がひろがっている。
ドイツのへツセン地方では、四〇余りのバイオウエスト処理工場が設置され、収集される生ごみの量が六%増えたにもかかわらず、最終的にごみ処理場に捨てられるごみの総量は減少した。
アメリカでもバイオウエストを捨てる専用のごみ容器が登場し、一九九三年に「バイオウエスト」を推奨するがある。
しかし、協会(SC〇R)も設立された。
コンポストの商品化は、普通、問題がつきまとう。
たしかに、有機性廃棄物のリサイクルは自然の力によって行うことが望ましく、そうすれば土壌を改善できるし、ごみの量も減らせる。
それに、商品化されたコンポストの質についても、まだまだ改善すべき点がありそうである。
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